「現実の自然世界では物理的な空間の一部を一つの物体が占有すると、他の物体は、その場所を占有することはできません。しかし、私たちの感覚を超えた世界に思いを馳せると、一つの物体の占有する空間に、他の無数に多くの物体がはたらきかけています。(略)そうすると、たとえば、誰かが何か一つの物を、手に持っているとします。すると他の人がまた何か持っている、それは別の物と考えられますが、しかし目に見えないところで因縁の連鎖、因果の網によってつながつているということになります」pp25-26
中村元『現代語訳大乗仏典5 「華厳経」「楞伽経」』(東京書籍, 2003)
世界的な仏教学者であった中村元による、仏教思想を説明したNHKテレビ放映内容をまとめたシリーズ。華厳経について触れてみたかったので読んだ。初学者むけなのでやや平易すぎるが、雰囲気をつかむには良い本だろう。

華厳経における世界の捉え方についてまとめた。
スタートは右側の中。事法界とは日常意識と呼んでよい。物はそれぞれが単独で存在していて、勝手に関係することはない。
続いて左下。物が存在すると思うのは意識による作用であって、見えない性質しかないとする考え方。
その上。いやいや、意識だけが存在はせず、物質と意識が作用しながら世界は作られているとも考える。般若心経でいう「色即是空・空即是色」である。
華厳経はさらに進む。「理」自体が空性を本質としているのだから、現実世界ではやはり理は存在しない。意識の上で理を仮に置いて議論を進めたものの、最終的には事だけの世界観になる。当初の個々別々に存在はしない世界観ではなく、全ての物体が相互に関係しあっている世界観に到っている。
「お世話さま」と日本人が何気なく口にする。これは具体的に世話になったと考えているのではなく、世界そのものがお互いにどこか関係していると感じているからこそ、違和感なく発言される言葉なのである。
□参考ウェブサイト
『中村元』

