2009年05月04日

1000旅 井筒俊彦『神秘哲学 第一部 自然神秘主義とギリシア』★★★★★

「ギリシア的思惟の底には、少なくとも密議宗教的な神秘体験のパトスが渦巻いていることもまた事実であり、このパトスの地下の声に耳を傾けることもギリシア哲学にたいする正しいアプローチの一つではあると私は今でも確信している」p4
井筒俊彦『神秘哲学 第一部 自然神秘主義とギリシア』(人文書院, 1978)

★本の概要
 1,000冊目は井筒俊彦先生の本にすると決めていた。しかも、先生が慶応大学文学部助手だった頃の最初の講義をまとめた本をである。初版の発行は昭和24年。実に60年前、先生が35歳の時に発刊された一冊だ。
 内容は、プラトン、アリストテレスに代表されるギリシア哲学史を、神秘主義の切り口から切りなおした内容。色褪せて見えたあの哲学者達が、先生の手にかかれば、鮮やかによみがえる。本著は第一部。プラトン以前の哲学者たちが登場する。

★二つの世界観
 井筒先生が本著でかかげた主題の一つは、ギリシア哲学の源流に二つの霊魂観がある点である。
 一つは内的霊魂観。魂/意識はそもそも彼岸(異なる次元)にあるのであって、この生の瞬間だけ肉体に宿り、死してまた彼岸にもどる世界観。デュオニソス信仰に源をもち、ピュタゴラスの輪廻転生説を経て、万物流転を捉えたヘラクレイトスに至る思想である。
 いま一つは外的霊魂観。霊魂とは自我や個体ではなく、全宇宙運動の原理そのものと捉える。自然学派とよばれ、西洋哲学史の原点とみなされるミレトス学派、クセノファネス、パルメニデス、タレス、そしてアリストテレスにつらなる流れである。

★宗教と科学へ
 二つの世界観はプラトンで一瞬繋がりながらも、その後も二つに分かれる。現代で言えば前者は宗教に、後者は科学につながり、いまだに争いあっていると言えるだろう。
 井筒先生は、ギリシア哲学史を舞台に、現代にも通じる主観・客観の大問題の構造を捉えてみせた。

★編集後記
 旅は1000冊をむかえた。1000といっても知識がその分増えた訳ではない。単なる知識はすぐに記憶から外れてしまう。しかしこの旅は続けようと思う。読書は知識を得るためのものではなく、自分の内面の底深さを知るためにあると、はっきり分かったからだ。読むほどにシンプルになる読書。また、黙々と読み進めていく。

posted by 藤沢烈 at 23:00| Comment(8) | TrackBack(0) | 本の旅 ★★★★★ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
1000旅到達おめでとう!
これからも、楽しんで読ませてもらいながら、旅の行く末を見守りたいと思います。
Posted by 清水宣晶 at 2009年05月05日 00:25
このたびは1000旅おめでとうございます。毎日興味深く拝見しています。
これからも素敵な記事をアップしてくださいね。
Posted by 稀 at 2009年05月05日 00:58
1年半、1000冊目おめでとうございます。
すごくいい仕事をしてるなあと思いました。
まだまだ僕の外的環境は文化や政治・経済や業界構造、内的環境は組織や商品・サービスです。(ここまではやってる人はたくさんいるし、学び方も教えてもらえる)
もっとその土台となる話を知りたい時、ここまでキチンと書かれたヒントは、中々世の中に出回ってないなあと思います。

どうでもいいですけど、烈さんと日比谷公園の横にある会社の仕事をした時以来の「休める」GWですよ笑
Posted by kurihara at 2009年05月05日 02:22
1000旅、おめでとうこざいます☆
烈さんにとっては通過点ではあるのでしょぅが… やっぱりどきどする数です。

「単なる知識はすぐに記憶から外れてしまう。しかし…」

思わずうなずいてしまいました。

ついこのあいだから読ませて頂いておりますが、日中、がーっと働いた後ちょっと寄らせて頂いて、気分を変えてまた臨む。
そんな憩いの場所に巡り会えた気がします。

ありがとうございます。
Posted by 家鴨。 at 2009年05月05日 07:33
1000冊おめでとうございます★
ちょくちょく覘いては、烈さんのHIT BOOKS読んでます。
これからもどうぞ参考にさせてください。

めざせ、イチロー!★
Posted by ayaco at 2009年05月05日 09:18
さらなる頂きへ!
Posted by hiro at 2009年05月05日 12:41
皆さん、コメント有難うございます。
読みつつ書きなぐられた粗い内容が多いにも関わらず、読み続けて頂いて感謝します。

1日3冊の必要はないかもしれませんが、読書習慣がもっと広がるといいなあ、と思っています。そうした仕掛けを何か考えたいこの頃です。
Posted by 烈 at 2009年05月05日 14:21
1000冊、お疲れ様です。
これからも楽しみにしてます。
Posted by 小笠原 at 2009年05月06日 12:16
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