2009年06月24日

1130旅 村上春樹『海辺のカフカ(上)』★★★★★

「今から百年後には、ここにいる人々はおそらくみんな(僕をもふくめて」地上から消えて、塵か灰になってしまっているはずだ。(略)僕は自分の両手を広げてじっと見つめる。僕はいったいなんのためにあくせくとこんなことをしているのだろう? どうしてこんなに必死に生きていかなくてはならないんだろう?」p114
村上春樹『海辺のカフカ(上)』(新潮社, 2005)


★本の概要
 2002年に新潮社から発売された村上春樹の長編小説。15歳の少年「田村カフカ」が主人公であり、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『1Q84』同様に、二つの物語が交互に語られていく。ニューヨークタイムズが2005年ベストブック10冊に選ぶなど、海外の評価も高い。上巻はカフカと、もう一人の重要人物である「ナカタさん」がそれぞれの事情によって中野区から西に向けて旅に出る過程が描かれる。

★カフカの問いとは何か
 「私たちはどこから来て、どこに向かうのか」。それが「カフカ」の大きなテーマであると感じた。
 自我もポリシーも持ちながら、未来は描けない15歳という絶妙な設定。父を殺し母を犯すオイディプス神話がモチーフになっていて(どこから来たのか)、目指す先もなく何かに導かれて旅に出ていく物語(どこに向かうのか)。重要人物であるさくらが「なんに意味があるかといえば、私たちがどこから来て、どこに行こうとしているかってことでしょう。ちがう?」とのセリフに対して、「僕はうなずく。僕はうなずく。僕はうなずく」と三回繰り返される。
 子供の頃の事件により知的障害をもつナカタさんも同様だ。記憶と読み書きの能力を失っていて(どこから来たのか)、中野区でのある怪人物との事件をきっかけとして、カフカの後を追うかのように四国へと向かう(どこに向かうのか)。
 二人が何者であり、何に向かって生き急ぐのか。自分の立場と重ね合わさずにはいられなくなる。そして下巻では二人の結末が描かれる。村上春樹が描いたのは、現実のある物語への対抗としてであったはずだ。オウム真理教・麻原彰晃がつくった物語への対抗として。(1131旅に続く)

★編集後記
 よし旅に出ようと思って、まず買ったのは理科年表。最適な気温と湿度のエリアを選ぶためです笑。


posted by 藤沢烈 at 18:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の旅 ★★★★★ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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