「人の生活の一部始終がリアルタイムで記録されているので、景色・音・色などすべて完璧なフラッシュバックがPVRや完全なVRにダウンロードされて、どのような時間におけることについても、同じ現実味の中で再訪できるのだ。人は、毎日のほとんどの時間をこのサイバーリアリズムの中で過ごすのである。こうして、過去と現在を区別することができなくなり、時の流れというものは意味のない概念になってしまう」p34
スーザン・グリーンフィールド『未来の私たち』(産業図書, 2008)
★本の概要
神経科学者であり、英国王立科学研究所所長であるグリーンフィールド女史による一冊。ライフスタイル、ロボット、職業、生殖、教育、テロリズムといった切り口における未来像が描かれる。こうした未来技術系では、ミチオ・カク氏の『サイエンス21』に次いで詳しいと感じた。
★そして人と世界は融合する
技術が見通す世界は、個人と世界をますます繋げていく。
家での生活はいかに変化するか。体調をセンサーが感知し、それに応じて室内の明るさや映し出される風景が変化する。睡眠中は血圧や脈拍がモニターされ続け、起床と共に気温湿度が変化する。遺伝子操作を通じて食事も自分の好みに合わせられる。有機食材のように味が濃く、見た目も鮮やかな野菜を摂るようになる。
バーチャル執事が自分の生活をサポート。お金は管理されて過度な無駄遣いは防ぐ。排泄物がモニターされて、ガンの兆候も見逃すことはない。健康、コミュニケーション、位置などのあらゆる情報は生まれてからずっと記録され続けられて、コンピュータによる判断に用いられる。
自分のすべてがモニターされるということは、逆に言えば他者が自分を管理することを許すことに繋がる。プライバシーという言葉は死語になるという。便利でリスクのない世界にも見えるが、社会にとって少しでも「危険」と目されると、保険会社や警察組織によって「保護」されることになるかもしれない。ジャック・アタリが言うところの「超監視社会」は近づいている。
★編集後記
ヒプノセラピストとして活躍されている、昔からの友人である桧良手とも子さんとお茶。ゆっくりお話できたのは五年ぶり。それでもベクトルの方向が近づいているのは面白いものですね。


