2009年08月04日

1205旅 マルセル・モース『贈与論』★★★★★

「諸社会は、社会やその従属集団や成員が、どれだけ互いの関係を安定させ、与え、受け取り、お返しすることができたかに応じて発展した。(略)クランや部族や民族は虐殺し合うことなく対抗し、互いに犠牲になることなく与えあうことができたのである。これこそが彼らの知恵と連帯の秘密の一つである」p290
マルセル・モース『贈与論』(筑摩書房, 2009)

★本の概要
 ポトラッチ、クラ交易といった伝統社会の慣習を考察し、近代社会とは異なる「贈与交換」の概念を導き出した古典的一冊。今年に入って筑摩書房が文庫化したことで、各段に入手しやすくなった。

★伝統社会における習慣
 伝統社会において、「贈与」「受領」「返礼」の三つの義務が存在するとモースは考えた。財産を贈与しなければ首長の面子は消えうせる。贈与されることを断ることは難しい。贈与されたのちに返礼しなければ、立場を失う。この前提の上で、伝統社会の奇妙な風習をモースは考察していく。
 ポトラッチ。「食物を与える」「消費する」といった意味。互いに富を贈り合うのだが、相手よりも多くの富を与えられることが権力の象徴になったため、富が破壊されつくすこともある。ハウ/haw。マオリ族は、贈り合う品物(タオンガ)にはハウ(霊)が込められていて、だからこそ品物を贈りあわねばならないと定められている。

★編集後記
 無駄な殺し合いを防ぐための知恵が贈与なのだという。であるならば、不可思議な金融資本主義の暴走も、地球規模のポトラッチと言えるかもしれない。

posted by 藤沢烈 at 21:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の旅 ★★★★★ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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