2009年08月15日

1216旅 戸部良一ほか『失敗の本質』★★★★★

「マレー・シンガポール作戦、フィリピン作戦、ジャワ作戦、ビルマ作戦などでは、作戦の手本のような先制奇襲作戦をやってのけたが、初期作戦以降はウソのように弱体化していった。成長期には異常な力を発揮するが、持久戦にはほとんど敗者復活ができない。成長期には、組織的欠陥はすべてカバーされるが、衰退期にはそれが一挙に噴出してくるからである」p394
戸部良一ほか『失敗の本質』(中央公論社, 1991)

★本の概要
 防衛大学校に当時在籍していた野中郁次郎らが共同研究し、大東亜戦争において日本軍がなぜ負けたのかを戦略・組織面から考察した一冊。ノモンハン、ミッドウェー、ガダルカナル、インパール、レイテ、沖縄の各事例が取り上げられている。戦争史が理解できると共に、今だに抱え続ける日本の組織の課題が浮き彫りになる。終戦記念日ということで手に取った。

★短期的・属人的な日本軍
 六つの事例の結論として、戦略面と組織面における日本軍の課題が整理されている。
 まず戦略については、アメリカ軍と比べて極めて短期的な視野しか有していなかったことが分かる。1.目的。各戦において作戦目的は曖昧かあるいは多義的であった。2.戦略志向。時間軸の設定があまく、各戦では短期的に戦いを決することに重きがおかれた。3.戦略策定。特定の論理はなく、現場の事象(しかもFactではない)の積み上げという帰納法で戦いの方針が決められていた。4.戦略オプション。短期的視野である故に検討されているオプションは狭く、また変化への対応も不十分。5.技術体系。大和・武蔵に代表されるように一点豪華主義が特徴だった。
 続いて組織は、属人性が高いとの特徴がある。1.組織構造。システムチックな米軍の組織に対して、人的ネットワークを重視した集団主義を原理とした。2.統合。米軍が陸・海を統括する統合参謀本部が組織されていたのに対し、大本営陸海軍部では体系的な統合を実現できなかった。3.学習。対人関係を配慮するあまり、ノモンハン等の失敗から学習できなかった。4.評価。ここも属人性の高さゆえに、結果重視の評価ができずに、プロセスや動機で人事が行われた。

★編集後記
 筆者たちは、日本軍の戦略・組織が乱れた要因は、過去の成功に囚われ、リーダーが高年齢化した点にあると考えた。さて、日本社会は企業にせよ政治にせよ、全く同じ状況下にあるようだ。日本はいつ次の終戦を迎えるのだろう。


posted by 藤沢烈 at 22:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の旅 ★★★★★ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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