2009年09月19日

1248旅 『空海 (KAWADE 道の手帖)』★★★★★

「表層風景としては、たしかにそれ自体で自立的にそこにあるかのように存在世界が現象している。しかしそれは、実は、全体としても、またそれを構成する個々の事物としても、すべて根源的にコトバ的性質のもの、コトバを源泉とし、コトバによって喚起され定立されたもの、つまり簡単にいえば『コトバである』のだ」p62
『空海 (KAWADE 道の手帖)』(河出書房新社, 2006)

★本の概要
 河出書房新社による空海に関するアンソロジー。空海思想の世界性についてスター達が競作している。井筒俊彦先生はじめ、中沢新一さん、松岡正剛さん、中村元さん、はたまた明治期に書かれた南方熊楠や内藤湖南の文章も掲載されている。

★コトバが世界をつくる
 高野山に立ち寄るので読んでみた。個人的に密教よりも禅の方が今はシンパシーを感じる。ただし思想としては空海の宇宙観に惹かれる。本著にも掲載されている井筒先生の論文によるところが大きい。
 物事が先に存在してコトバが名づけられるのではなく、コトバありきで世界が形作られる。そうした思想をもつ真言密教について、他の思想体系と比較しながら説明されていく。
 易経では、天・地・雷・風・水・火・山・沢を意味する八卦の組み合わせによって世界が作られるとする。八要素は当然物質ではなく、深層意識下の意味のパーツ。無意識に意味ができたのちに、表層意識は混沌とした世界に特定の意味を見出す。
 ファズル・ッ・ラーを始祖とするイスラム文字神秘主義。地・水・火・風の四大要素のぶつかりあいによって、決して聴こえない「響」が生じるとする。彼らにとって物質は響であり、そのまま神の声を意味することになる。
 『声字実相義』にて「四大相触れて音響必ず応ずるを名づけて声という」と空海は語る。真言密教においても、大日如来によるコトバ=真言が発生されることで、世界は創造されると考える。空海が活躍したのは1200年前。欧米において意味文節理論が検討され始めたのは、この100-200年に過ぎない。

★編集後記
 高野山に到着した。

posted by 藤沢烈 at 16:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 本の旅 ★★★★★ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちわ。突然ですが・・・
>物事が先に存在してコトバが名づけられるのではなく、コトバありきで世界が形作られる<・・・のところ、ソシュールと同じでは?・・・丸山圭三郎『欲望のウロボロス』が、思ってたより読みやすくて、ハマりそうですが・・・あの‘シニフィアン−シニフィエ’をめぐる考察の場面で、色即是空−空即是色などが現れたり^^
本能の壊れた‘人間’の、宿命としての‘コトバ’・・・おもしろいですよね、たしかに!
Posted by ちーぼー at 2009年09月28日 08:32
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