2012年02月02日

1403旅 飯尾潤『日本の統治構造』★★★★★

「日本では一般に、大統領制では大胆な権力行使ができるが、議院内閣制では抑制的な権力行使しかできないと思われている。しかし欧米での認識は逆である。議会と大統領が別の選挙で選ばれ、権力が厳然と分立する大統領制における大統領より、議会と行政府の双方をコントロールできる内閣の長である首相のほうが、本来、大きな権力を持つのである」p2
「日本では、多元主義に形容詞を付けて、『仕切られた多元主義』『官僚主導大衆包括型多元主義』『パターン化された多元主義』などといった呼び名が相次いで提起された。こうした形容詞付き多元主義論は、日本ではアメリカのように利益集団が自由に結成され、それらが象徴を繰り返しながら、政治の主役となる状況がないことを示している。つまり日本政治では、政治活動の舞台が、あくまでも象徴の垣根を軸として設定されているのである」p38
「政策形成が所轄課からはじまるように説明したが、本当の出発点は、それぞれが所轄している業界などの諸団体である。そして、下からの積み上げで政策を決めることは、政策実施の点でも有利であると述べたが、それは政策実施を行う地方政府や、関連団体の意向をふまえて、政策を立案するということを意味していたのである」p75

 日本における統治。即ち自民党、省庁/官僚、地方政府といったアクターが戦後政治史の中でいかに役割を変えていったかを分析的かつドラマチックに描かれた一冊。日本の統治構造が、自分の頭の中で初めて結晶化された。『官のシステム』(大森彌)も素晴らしかったが、こちらはより深く本質に迫っている。著者は政治学者の飯尾潤氏。
 大統領制よりも議院内閣制の方が、世界的には権力集中的だと説明する伏線からスタート。省庁/官僚が日本の統治を支えてきた歴史と限界を整理。しかし官僚陰謀論のようなものは妄想であって、地方や業界などの日本各地の多様性が、そうした統治構造を認めてきたと説明する。しかし、曖昧な統治では、変革をすすめる障害となった。

「日本の中央政府が、新公共経営(NPM)の流れに乗っていないのは、突き詰めればこの問題(政府における企画と実施の未分離)に行き着く。導入された制度は、政策評価をはじめとして、外見的には似ていても、内容的には諸外国と大きく異なったものとなり、あまり効果を上げていないことが多い。新公共経営をはじめとする改革を推進し、新たな官民関係を築くためにも、決定中枢を明確化する議院内閣制の強化は不可欠である」p231
「望まれるのは『民意集約型政党』の整備である。(略)ネットワーク型の『情報交換の輪』を使って、必要な意見交換を行うのも、現代的な組織のあり方である。また、議員がコンビニエンス‥ストアのフランチャイズのようなかたちで、政党本部とつながり、看板を統一するだけではなく、常に売上情報、すなわち有権者の要望や反応を政党が集約することで、政党の方針を決めていくといった組織論もあり得る」p235

 飯尾氏は、変革のためには「権力核」が必要だとする。そのためには大統領制よりも、議院内閣制を機能させることが早道だと提示する。小泉純一郎元首相がそのモデルを示したように。
 同時に、散らばった民意を集めえる「新しい政党」が必要だという。ここに対しては二つの方向性があるように思う。一つは橋下徹大阪市長に代表される地域政党。地方議員を通じて、コミュニティの声を直接拾い上げることが可能だからだ。そしていま一つはオープンガバメント。Facebook等が発達することで、地域を越えてリアルタイムに民意を集めることもできると思う。震災復興に携わりながら、そうした可能性に思いを馳せる。
posted by 藤沢烈 at 23:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の旅 ★★★★★ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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