2012年02月10日

1410旅 関博満『東日本大震災と地域産業復興』★★★★

「三陸の漁業は素材の良さに気づき、新たな付加価値の高い産業として動き始めていた。また、近年、気仙沼を中心とする三陸の各地に勃興してきた水産加工業は、新たな世界を切り拓いているようにもみえた。この15年ほどの間に、三陸には年商20〜100億円規模の水産加工業が大量に登場していたのである」p3
「三陸には、基本的に前浜の優れた『素材』がある。ベクトルは対照的だが、漁業者も水産加工企業もそこを出発点にしている。そして、発展過程の中で濃密な水産業コンプレックスが形成されていく。その中に身をおくことによって多様な事業展開が可能になっていく。その積み重ねは歴史的な意味を帯び、構造化し、『地域的な雰囲気』を形成していくであろう」p132
「養殖技術、冷蔵・冷凍技術、調理技術、流通部門の進歩、地方での高齢化、学校給食、生協などによる採用といった社会的な環境変化により、特に養殖部門、水産加工部門は飛躍的な進化を遂げてきていた。構造不況産業にみえながらも、実は三陸には際立った発展を示す水産加工企業が大量に登場し、また、小規模ながらも漁師と消費者を直接結びつける新たな取組も開始されていた」p58
「地域の雇用、産業振興を図る上で、自治体と企業とのコミュニケーションは極めて重要である。地域も一つの経営体なのであり、自治体はその責任ある担い手として働き、また、企業は力のある有力な市民として雇用を生み出し、さらに、地域を希望に満ちたものにしていく必要がある」p49
「これからの地域経営にとって市役所の役割は大きなものになっていく。市役所の産業系部門と地域企業、さらに教育機関のコミュニケーションを豊かにし、幅の広い人材育成を重ねていくことが必要であろう」p95

■概要
 地域産業論の大家であり関満博氏による、東日本大震災における地域産業復興のレポート。発災半年目の段階の内容だが、内容は濃密。気仙沼や釜石・大船渡における水産加工業の歴史と、被害の現状、そして復興に向けた課題が、地に足が立った筆致で描かれている。間違いなく、震災産業復興に関わる方は必読だ。

■三陸の水産加工業
 震災復興に関わるまでは、水産業といっても漁師と市場といった貧弱なイメージしかなかった。しかし、近年の冷凍技術や流通市場(給食市場など)の変化に伴い、産業は高度化しているという。原材料は中国・韓国から輸入し、加工後に国内流通へ。また高付加価値化したあわびやフカヒレは東アジアに広く輸出。工場も海外展開し、100億規模の年商を誇る企業はごろごろある。小規模業者も、ネット等を活用した六次産業化に進み始めていた。
 しかし震災によってそうした基盤が消失されたのも確か。地域復興を遂げるためにはそうした水産加工業の復活が鍵となる。

■地方自治体と企業
 産業復興が最も早かったのは、宮古市だという。理由は、震災以前から市役所と地元企業の繋がりが濃く、震災二週間後には、産業振興担当が地元企業回りを始め、県や国を待たずに支援を開始したいという。単純に企業誘致をしても、地元と繋がりがなければ、収益が出なくなった瞬間に再移転してしまう。地域の企業・住民・教育機関などが連携して、産業を生み出すことが、持続的な復興に欠かせない。そのための自治体の役割は大きい。


posted by 藤沢烈 at 07:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の旅 ★★★★ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/251472483
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック