2012年02月11日

1411旅 ジェイムズ・S・フィシュキン『人々の声が響きあうとき 熟議空間と民主主義』★★★★

「候補者指名のプロセスに、十分な情報にもとづいた、代表性をもった国民の声を反映させる方法はあるだろうか。その答えは、古代アテネの慣習にあった。くじ引きにより選ばれた何百人もの市民が定期的に審議し、重要な公的事項の決定をおこなっていたのだ」p24
「熟議とは、市民の一人ひとりが議論において対立する意見を真剣に吟味することである。次の5つの項目により、熟議の質を論じることができる。1.情報 2.実質的バランス 3.多様性 4.誠実性 5.考慮の平等」p60

■概要
 世論調査をするほどに内閣支持率がさがり、結果として毎年リーダーが入れ替わっている。別の見方をすれば、政府の状況に変わりはないのに、首相が新しくなるだけで支持率が急上昇しているとも言える。そうした世論調査=民意を基準にしても、まともな政治は行えないと誰もが気づいているハズだ。"熟議"をベースとした討論型世論調査(deliberative poll)が、現状への対案になることを示した一冊。熟議民主主義の解説書とも言える。著者はスタンフォードの熟議民主主義センター所長。

■討論型世論調査とは
 「政治的平等」「政治参加」そして「熟議」の3つを満たすことを目指したのが討論型世論調査。まず母集団から無作為で参加者を選ぶ。彼らは一同に介し、小グループや全体会議を通じて何時間にもわたり熟議を重ねる。プロセス中に生じた論点は、政治家や専門家にぶつけられる。最終的に投票が行われて決定に至る。
 従来の世論調査や投票は、平等と参加を重視したが、確かに十分な情報が行き渡っていたとは言えない。ICTの活用によって、熟議と参加の両立が果たし得る時代が近づいたのかもしれない。

■熟議のポイント
 熟議の質は下記の5つにより決まるという。
  1情報・・参加者に十分な情報が与えられているか。
  2実質的バランス・・二つの選択肢についてバランスよく情報提供されているか
  3多様性・・マイノリティ含めて様々な立場の意見が含まれているか
  4誠実性・・参加者が異なる意見を真摯に吟味するか
  5考慮の平等・・誰が話したかではなく、内容に応じて意見が吟味されたか
 こうしたポイントに注意して熟議が行われることで、政治的立場や権益を離れ、イメージにも惑わされずに、参加者は意見を整理できるようになるという。

 震災発生して今日で11ヶ月目。未曾有の被害があり、立場を超えて臨むことが復興に求められる。しかし、立場(民間と行政。被災者と支援者。福島と東京)により意見を固めてしまうケースも少なくないように思う。復興の現場にこそ、熟議空間が必要だと考えている。

posted by 藤沢烈 at 17:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の旅 ★★★★ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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