2012年02月21日

1418旅 高橋彦芳・岡田知弘『自立をめざす村』★★★★

「私は村長に就任してから、『実践的住民自治』ということを唱えてきました。一般に自治体の行政は、住民の参加と住民自治を大事にして運営されるべきものですが、そのうえに実践を加えることにしたのです。もっと実践的に住民が行政に関わるようにすることで、住民の自治を回復し、参加民主主義を実現していくことができると考えたのです」p25
「村民の集落単位での自主的な自治活動との『協働』につとめてきました。すなわち、田直し事業にしろ、道ふみ事業にしろ、下履きヘルパーにしろ、住民が集落単位で自己決定し、自ら活動することを大前提にした事業です。いわば村="公"と住民="私"が、"協働"してはじめてできる事業であり、その利益は村民のものになります」p100
「高齢者の日々の生活の基本部分は、この年金の支出によってまかなわれているわけですから、年金経済の循環によって村の小売業やサービス業が支えられている側面が強いといえます。これらの年金をいかに村内に循環させて、地域内に雇用や所得を生み出していくかが、高齢化社会における地域経済の持続的発展を考えるうえで日本のあらゆる地域で重要な課題となっています」p88

■概要
 東日本大震災翌日に震度6強の震災を被った長野県・栄村。元々65歳以上が40%以上である高齢村であり、国内最高積雪(7.85m)を記録した豪雪地帯。そうした厳しい環境の村だが、本著者である前高橋町長時代に、交付金に頼らない自立した村づくりが進められていた。村と住民の協働のあらましが描かれた一冊。今回の震災復興における東北の自立に向けても、いま読んでおきたい。

■実践的住民自治
 「住民自治」との言葉は全国どこでも使われている。しかしその多くは、自治体主導で数回の「まちづくりワークショップ」が開かれる程度であり、役所が定めた計画を追認する範囲に留まっている。栄村では、住民が主体的に関わりながら、自治と経済を支えている。たとえば集落ごとの知恵や技術を活用し、猫つぐら(http://nihonichi.nagano-ken.jp/e2356.html)などの名産も生み出した。
 田直し事業も面白い。棚田の生産性を向上するために圃場整備が必要になるが、農家個別に実施するとコストが割高。そこで村・農家・圃場事業者が協働で村全体の整備を計画。他にもトラクタ等の共有や農作業の共同実施を進めた。その結果、外の農業法人に頼らずとも、村の家族経営体が維持できる方法を見出したという。
 栄村の人口は2000人である。石巻の人口は15万。釜石は4万。どこの市町村も数万単位。住民が主体的に関わる数千人のコミュニティ単位での復興を考える必要がある。さもなければ、外の事業者が復興予算を食い尽くし、残る被災住民の方々の生活が変わらない光景が生じてしまう。もちろん医療や教育では他自治体の連携が必要になる場面もある。しかし、基本となる住まいと暮らし、生業についてはいま一歩小規模で進めていくべきだろう。

■年金の活用
 高齢社会とは、裏を返せば年金という市場をもっているとも言える。栄村では村の会計歳出35億円に対し、年金支出額は10億円にも上るという。ゆくゆくは限界もあろうが、当面の経済前提として活用できる。被災地でも同様だろう。ただし、こうした年金が銀行に留まり、やがて休眠口座になって銀行収益になるなんて事態は避けねばならない。その為には地域内事業が生み出される必要がある。事業主体とししては、場合によっては役場と地元住民で共同出資することもあってもよい。栄村では、(財)栄村振興公社が村の寄付によって誕生しているが、人件費など費用総額の70%が地域内に還元されているという。これからの行政民間連携のモデルといえるだろう。


posted by 藤沢烈 at 11:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の旅 ★★★★ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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