「70,80年代の米国の経済社会の後退の中で、米国の再生と企業の健全な発展のためには、地域社会の向上が必要であり、企業は地域社会の向上のために活動すべしとする動きが盛り上がった。これは『企業フィランソロピー』といった言葉によって説明されてきた」p33
「企業は、児童労働や遺伝子組み換え食品から塩ビ使用の問題まで、社会・環境問題について自社の見解を持つ必要に迫られる。そのため、多くの企業がNGOで働いた経験者を採用するようになった。トリプルP(経済・環境・社会)ボトムラインは新聞などへの全紙大の企業広告を掲載するコミュニケーション・キャンペーンではなく、ステークホルダーとの協力と交流を重視し、ブランドやマーケティングコミュニケーションについて新しい方法を考えることだ、と論じられた」p51
■概要
企業による非営利セクターとの協働について、海外事例を交えてまとめられた一冊。「CSR評価」「パートナーシッププログラム」「企業行動基準」「認証制度」「CRM」「BOPビジネス」「企業寄付・従業員参加」「ソーシャルビジネス」といったテーマ別に、最新動向を理解できる。個人的には、FSC(森林管理協議会認証)とFLO(フェアトレード認証)に関するNPOをコンサルティングしていることもあって事例を身近に感じた。著者は元ジェトロ職員の拓殖大学教授。プラン・ジャパン理事やACE評議員も務めており、海外NGOが持つ国際的な監視能力が持つ可能性を強く評価しているのが印象的だ。
■社会貢献から社会責任へ
CSR論が広がったのは、1995年のシェル社の問題によるという。北極海で産業廃棄物を投棄していたシェルに対して、グリーンピースが不買運動を展開。その動きは欧州に広がり、ドイツでは74%の市民が不買に積極的になった。その後、シェルは廃棄物投棄をやめ、環境問題の専門家を雇用。トリプルPボトムラインに代表されるコンセプトを提示しつつ、徹底したCSR活動を展開した。単なる社会貢献キャンペーンではなく、多様なステイクホルダーに対して社会的責任を果たすことが、企業にとっても重視される先駆けとなった。
■日本では?
グリーンピースやシーシェパードに代表される攻撃的なNGOが有名になっているが、それらに日本市民に共感されていない。震災で新しい局面を迎えたものの、このままではCSRは一過性に終わるだろう。非営利セクター側が正確な情報把握を行い、市民からの支持を受ける土壌を作る必要がある。震災復興でも、NPO・NGOの情報発信は不十分。今後の成熟が期待される。
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