2012年03月15日

原発被害の賠償問題は始まったばかり   〜卯辰昇『原子力損害賠償の法律問題』★★★(1434旅)

■福島被災者を悩ます賠償問題
震災から一年が経ったが、福島では元の住所を離れて避難生活を送られている方は15万人。県を離れているのは6万人を超えています。岩手や宮城で被災された方同様に、やがては自立した生活を皆さん目指されています。ただし福島が特別なのは、元の土地に戻りがたい状況や、原発による健康被害を気にせざるを得ない点にあります。事業者は風評被害もあります。様々な意味でご苦労されている中で、東京電力からの賠償も、皆さんの頭を悩ます大きな問題です。報道にあるように、賠償情報が伝わりにくかったり、求められる書類が複雑すぎたり、被災者にとって不利な内容も少なくないとのこと。
なお、福島原発20km圏内を中心とした避難区域の方々と共に、福島23市町村における自主避難者にも賠償する方針は既に東京電力が打ち出しています。
http://www.asahi.com/edu/kosodate/news/TKY201202280725.html
同時に、賠償問題のヤマはこれからになります。卯辰昇氏によれば、スリーマイル島事故後は、幾つもの訴訟がアメリカでは提起されたそうです。福島でも、時間を経るに従って訴えのパターンは広がることでしょう。
改めて、福島の問題はまだ始まったばかりなのだと、思わざるを得ません。

■引用
「原子力事故に起因する損害賠償問題、核廃棄物処分をめぐる問題等、米国では多様な訴訟が提起されている。わが国でも福島原発事故を契機に、米国同様の訴訟が提起される可能性があり、本書では、米国での原子力関連訴訟についても紹介する」p2
「中間指針追補においては、福島原発からの距離ではなく、自主的避難等対象区域を福島県内の23市町村とし、自主避難者に対し一律、定額の賠償を認めるものとした。(略)2011年12月末までの個々人に対する賠償として、18歳以下の子どもおよび妊婦が40万円、その他は8万円とするものである」p192


posted by 藤沢烈 at 22:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の旅 ★★★ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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