水産加工業の復活が、東北復興への主たる課題です。漁業は付加価値が高くなく、雇用を広げることはできません。気仙沼では、一次産業従事者は2700人ですが、二次産業は7300人。そのうちの7割は水産加工関連です。製造品出荷額1100億のうち、約1000億も水産加工。
震災当初は、漁業にくらべて水産加工の行政支援が手薄だとの意見もありました。これは改善しています。特に、中小企業グループ施設復旧整備事業、いわゆるグループ補助金がポイント。サプライチェーンや地域雇用を支えることを認定されると、国が1/2、県が1/4補助するというものです。
http://j-net21.smrj.go.jp/watch/news_tyus/entry/20111216-05.html
また、国は資金を提供し、県は戦略を検討するという役割も一定量果たしています。例えば村井嘉浩・宮城県知事は、県内142漁港の中で、気仙沼・志津川・女川・石巻・塩釜を戦略的な漁港に設定。集中的に整備を行いつつあります。
■100人のコーディネイト人材
では残された課題は何か。私は、民間事業者が長い目線でのビジネスプランを描くことにあると考えています。単独事業者では再建は困難です。漁業者、行政、東京など販売先などの関係者と利害を調整しつつ計画を練らないと、復興資金や民間資金を融通することはできません。
もちろん、関係者どうしのコーディネイトができる人材は限られています。被災地では、既に要職を担っています。東京など、被災地外から人を送り出すことが求められているわけです。漁業支援をご一緒している茂木さんが昨日下のイベントで登壇しましたが、登壇物みな、同じ問題意識を持っているとのことでした。
http://www.ginza-fukkou.jp/news/index.cgi#news_31
ところで茂木さんはマッキンゼー→リンクアンドモチベーション執行役員を経て、水産業復興に注力されています。温和な人柄と、堅実な実務を兼ね備えた素晴らしいリーダー。RCFもいつもお世話になっています。熱いブログを綴られていますので是非ご一読を。
http://motegi-takahito-spp.seesaa.net/article/255037931.html
■国ではなく民間からの復興を
もちろん国や県に期待される向きもありますが、個別事業者のサポートをする役割を官僚が担うことはできません。国税が投入されることに私は疑問があります。
まずは、民間同士での復興支援を。事業推進できる若い人材が現地に入ること。その人数は100人程度でも大きなインパクトがあると思っています。そのための制度もあります。その仕組み作りに、奔走していきたいと考えます。
■1436旅 村井嘉浩『復興に命をかける』★★★
「特に規模の大きい漁港(気仙沼・志津川・女川・石巻・塩釜)五港を集積拠点漁港と位置づけ、冷凍・冷蔵施設、水産加工業といった施設と一体となった漁港整備を最優先で行い、水揚げと水産加工業の仕事を確保します。次に、沿岸で漁船を使って漁業を行ったり、養殖業を営む人たちのための漁港を、142漁港のうち4割程度に集約しながら整備します」p80
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