2012年03月25日

復興教育の日本における意味合い〜教育行政の変遷から見つめ直す

「復興教育」という呼び方で、文部科学省は被災地における教育支援を続けています。流された校舎や学校備品を元に戻すだけでなく、日本における新しい地域教育モデルを作る意気込みを持っています。なぜ被災地での教育が、教育の未来と関係があるのか。教育行政の歴史的変遷をたどりつつ、その理由を考えてみたいと思います。参考文献には、宮崎市教育長を務めていた田原健二氏による『地域コミュニティと教育委員会制度』(鉱脈社, 2011)を使わせて頂きました。

■分権と集権で揺れる日本教育
 戦後の日本教育は、「分権」→「集権」→「分権」の流れを辿っています。最初は1948年の教育委員会法の制定。教育の民主化・地方分権を目指し、教育委員は公選制が採用されました。
 ただし、公選制があったことで、教育委員会に地域における政治的確執が持ち込まれます。結果として自治体首長と教育委員会から別々の予算案が出されるといった事態も起きました。そこで公選制をやめ、委員は首長が議会の同意をえて任命することに変更。また人事権を市町村から都道府県に移すといった地教行法(「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」)が、1956年に制定されます。分権から集権へと戻ったわけです。

■教育委員会の廃止を目指す
 その後、地方分権の議論が90年代に進んだことで、1999年には地方分権一括法が成立。その流れをうけて、2000年に地教行法改正。市教委に県教委が指示することが廃止されたり、首長が任命した市教育長を県教委が承認することがなくなります。市町村による教育の分権が進んだわけです。
 民主党の教育改革もこの流れを受けています。下記資料の2にあるように、「教育委員会の廃止」「学校運営のために"学校理事会"を設置」「学校理事会は、保護者、住民、教育からなる」といった内容を提言。地方分権に加えて、住民による教育ガバナンスを進めることとしました。
http://www1.dpj.or.jp/news/files/nchoukoku.pdf
 
■地域と学校連携が求められる4つの理由
 同時に、地域と学校の連携がますます必要になっている状況もあります。田原氏によれば、その理由は4つ。
 1.地域社会の共同体の結びつきが弱まる
 2.「知の循環型社会」の構築という生涯学習の理念が広まる
 3.自助、互助、公助による「新しい公共」という考えが広まる
 4.学校教育における学力観の多様化
 文科省トップダウンの教育では十分ではなく、多様な関係者を巻き込んだ学習が必要になってきた。それは行政だけでは担えず、再び形成される地域コミュニティが支える必要がある、ということでしょう。

■なぜ復興教育が重要なのか
 さて被災地での教育に戻ります。従来型の教育を行えば、地元産業が破壊された以上、現地の優秀な若者ほど、東京に出てしまうでしょう。中高生自身は「街を再建させたい」との思いを持っているわけで、地域を維持発展するための新しい学力観が求められています。また、津波と原発によって、被災地のコミュニティも壊されました。教育は、共同体の再建と併行して進めていく必要があるわけです。地域を新しい形でつなぎなおす。その上で、求められる地域教育を支援する。それが東北に求められているし、また日本全国でも必要とされているわけです。
 
■コミュニティ形成と教育支援をダブルで担う
 RCFでは、被災五地域(大槌町、大船渡市、石巻市、相馬市、いわき市)にて、新日本有限責任監査法人様のご支援のもと、日本フィランソロピー協会様と共に教育リサーチを進めてまいりました(http://rcf311.com/2012/03/25/120305education_houkoku_final/ )。そこで見えてきたのは、まさにコミュニティ再建と共に教育が必要である様子。ほとんどの各市の教育長の方も、地域の協力がなければ、必要な教育は提供できないと明言されていました。カタリバによる女川向学館、大槌臨学舎での放課後スクールも、地域全体で教育環境を支える必要があるとの理念ですすめられています。
 今後は、被災市町村において、旧市町村(中学校区)単位ごとにコミュニティをむずひ直すことをRCFの主軸として活動していきます。コミュニティを一つの方向性にベクトル合わせするためにも、教育は大きな大きな役割を果たすと確信しています。(3月25日)
posted by 藤沢烈 at 23:31| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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