2012年03月27日

震災復興はトップダウンで行うべきか、ボトムアップで行うべきか


 阪神大震災では、トップダウンで復興が進められました。一方、新潟県中越地震の復興は、ボトムアップ。東日本大震災は、どちらとも決められない難しさがあります。今晩はその事を考えています。

■トップダウンの復興〜兵庫県
 阪神大震災が起きたのは1995年1月17日。半年後の7月には、兵庫県は復興計画を発表します。東日本大震災で多くの市町村で計画が完成したのが12月であったことを考えると、スピーディといえるでしょう。その内容は、震災前から練られていた長期計画を進める内容でした。基本方針の中で次のように述べられています。
復興にあたって重要なことは、単に1月17日以前の状態を回復するだけではなく、新たな視点から都市を再生する「創造的復興」を成し遂げることである。そのため、「兵庫2001年計画」の総合的点検において示された「21世紀初頭の新たな兵庫の創造についての基本的な考え方」と「被災地域の長期ビジョン」のうえにたって、関西国際空港開港、大阪湾ベイエリア整備、明石海峡大橋建設等により世界都市関西の形成が期待されるなか、阪神・淡路の文化的特性を活かし、新しい都市文明の形成をめざすこととする。(『阪神・淡路震災復興計画』より)

"創造的復興"を合言葉に、語弊をおそれずにいえば「どさくさ紛れ」で神戸空港を建設してしまうわけです。地元民の生活のサポートは十分ではなかったとの声もありますが、スピーディな復興を成し遂げた成果がありました。なお、地元民の声を行政に伝えるための「まちづくり協議会」の活動も100以上うまれ活発でした。これは、急速に進む行政主導の復興計画に対抗するためでした。

■ボトムアップの復興〜山古志村
 住民主体での復興の好事例は、中越地震時の山古志村となります。地元材を生かした木造住宅を、被災者雇用しながら建設して地域内の経済循環を確立。共同体単位での復興が進められ、14集落すべてが再建したとのことです。被災地コミュニティを起点としたボトムアップ型の復興計画を、政府や新潟県がサポートする形がとられました。
 米国のハリケーン・カトリーナ災害の際のニューオリンズ州でも同様の事例がみられました。復興計画策定において、アメリカ・スピークスというNPOが支援した住民会議が3回実施。参加した4000人の市民の意見を反映させつつ計画は作られました。「洪水対策」「人口流出対策」という二つの側面を両立させる内容として、評価されたとのことです。
 余談ですが、2011年4月に実施された「総務省ICT地域活性化懇談会」において私はこのアメリカ・スピークスを紹介しています( http://www.soumu.go.jp/main_content/000112804.pdf )。当時座長を務めていた金子郁容先生に関心をもっていただけて、先生が同じく座長を務めていた「新しい公共推進会議」が6月に出した提言で「熟議による復興の街づくりを」と整理をして頂きました( http://www5.cao.go.jp/npc/pdf/suishin-shinsai-teigen.pdf )

■トップダウンとボトムアップを超越した復興哲学を
 さて、それでは東日本大震災においては、トップダウンとボトムアップ、どちらの復興が目指されるべきなのでしょうか。話は、そう単純ではありません。
 まずトップダウンは困難です。阪神の際は兵庫県に被害が集中していて、県がリーダーシップを取りやすい環境がありました。今回は複数県にまたがりますし、津波と原発という性質の異なる被害があります。3.11直後に政府がたてた復興構想会議でも、「地域・コミュニティ主体の復興を基本とする」とすぐにうたっています( http://www.cas.go.jp/jp/fukkou/pdf/kousou12/teigen.pdf )。
 ボトムアップ型もまだ機能していません。被害が甚大すぎて、各市町村がなかなかコミュニティごとの計画をまとめられないのです。これからの30年で人口が50%近く減るとの予想もあった地域です。単純に設備を元に戻しても、維持費で町が破綻することは目に見えます。被災地の主要産業であった漁業にしても、漁師が高齢化する中で、借金を背負わせながら復旧するのも現実的ではありません。
 「復興庁ではなく査定庁ではないか」。そんな声をメディアは大きく取り上げますが、ボトムアップを何でも正義とすべきではありません。現場と全体が意見を戦わせるのは健全であって、一つ一つの内容を見るべきです。
 現場主義でありながら、将来も見通した復興計画とは何か。トップダウンだボトムアップだと単純に類型化せずに、矛盾を引き受けながら現実をつくりだす復興哲学が求められています。(3月27日)

■参考文献
梶秀樹ほか『東日本大震災の復旧・復興への提言』(技報堂出版, 2011)
posted by 藤沢烈 at 23:12| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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