本日は、仮設住宅支援について考えます。
2012年3月8日時点で、避難生活者は34万人です。うち、10万人以上が仮設住宅に入居されています。こうした方々をいかに支援すべきでしょうか。改めて整理していきます。
■短期〜アセスメントにより戦略的・横断的に支援
仮設住宅に関して問題となるのは、孤立化や孤立死です。仕事を持たない方が8割いるし、住んでいた地域から離れたために隣近所見知らぬ中で暮らす人も少なくありません。もともと仕事で頑張っていた人ほど、お酒とテレビに引きこもってしまう。その為の対策として"お茶っこサロン"など、仮設住宅入居者が団欒できる場をNPOが提供しています。しかし元気なおば様のみが集ったり、一部団地でしか開催されないため、真にリスクある方々に十分届いていない現実もあります。
ここで紹介したいのが、各県の連携復興センターによる「仮設住宅周辺環境アセスメント」です。この調査を通じて、どの地域・団地のリスクが高い化を可視化することに成功しました。今週結果が発表された福島県の調査をみましょう。こちらは、ふくしま連携復興センター、福島大学災害復興研究所、日本財団、福島県、NPOが連携して実施し、RCFは分析を担当しました。
http://f-renpuku.com/?page_id=1114
155団地のうち、約半数ではバスを使わないと、10%ではタクシーや自家用車を使わないと病院やスーパーなど生活施設に行けないことが分かりました。こうした団地では、外に行くのに億劫になりますし、費用もかかりますから、引きこもりリスクは高くなります。また街の外れに設置されていて、支援が行き届かない傾向もあります。こうした調査結果は行政やNPOが共有し、支援をいかに行うかの検討に活用されています。
■長期〜コミュニティ形成によって2013年大移動に備える
さて、仮設住宅支援は、一年目を境に後半戦に移っています。その理由は、仮設の入居期間にあります。災害救助法によれば、仮設住宅の入居期間は建築基準法にのっとり2年間となっています。阪神大震災でも5年住んだ方がおられたように、市町村の要請に基づき延長されることは確実です。とはいえ、
どの自治体も、原則として2年間が限度と居住者に伝えています(下記は釜石市の例)。自立できる方は二年で離れていただき、事情ある方のみが延長できるわけです。
http://www.city.kamaishi.iwate.jp/saigai/contents/seikatsushien.html
ということで、2013年夏、多くの方は仮設から引越を行うことになります。今年の夏以降、仮設や借り上げ住宅から離れてどこに住むべきか、メディアでも話題となることでしょう。ここで鍵になるのは、仮設住宅の自治会と受け入れるコミュニティ側の自治会の連携です。仮設自治会として、誰がいつどのコミュニティに向かうのかを把握する。その内容を受入自治会につなぎ、スムーズにコミュニティ移転を進める。こうすることで、社会的弱者(高齢者、失業者など)が取り残されることが防がれます。注意したいのは行政だけでは細かなケアはできないこと。地元コミュニティやNPOの力が試されます。
■目の前だけでなく先を見通す
さきほど紹介した仮設アセスメントでは、自治会設置状況についても調査しました(p37-39)。県北(福島市など)91%、県中(郡山市など)では82%が自治会設置されているのに対し、県南(白河市など)では13%、いわき市では34%しか設置が確認できませんでした。計画的避難区域からの避難者では74%設置であるのに対し、他地域の避難者は52%に留まっています。コミュニティ形成という観点では、いわき市や相馬市といった地域にも目を配る必要があります。
被災者支援のあり方も、時間の経過とともに変化していきます。過去の災害対応、現在のデータを把握しつつ、地域ごとに適切なアプローチを取ることが求められます。目の前の問題にのみ反応することなく、少し先の状況を洞察しながら、支援を続けることが必要です。(3月28日)
■参考資料
岩手県・仮設住宅周辺環境調査 http://www.ifc.jp/log.php?itemid=429 (8〜9月調査)
宮城県・仮設住宅周辺環境調査 http://www.renpuku.org/archives/577 (10〜1月調査)
福島県・仮設住宅周辺環境調査 http://f-renpuku.com/?page_id=1114 (12〜2月調査)