2012年04月16日

2020年、日本と東北のかたち


 東北復興を考えるときは、2つのことを考えるようにしています。「現地の皆さんは、どんな生活を望まれているか?」、そして「近い将来、この街はどうなっているのか?」です。
 前にも書きましたが、現地の方々は「創造的復興」を望んでいません。あくまで、元の生活に戻ることを希望されています。もちろん革新的/イノベーティブな取組みも必要でしょうが、全体の中で5%程度そうした動きがあってもよい、程度です。
 被災者に寄り添うだけではわからないのは、将来のまちの姿です。住民要望に答えるままに箱物を作り続けても、10年後の維持費は払えなくなります。望むサービスを実現するために企業を誘致しても、補助金が切れれば企業は撤退します。仮にこれから人口減少が続くとしても、十分安心して住める街づくりをいかに進めるかが重要なのです。
 ということで、東北の10年後、20年後の姿を私は考え続けています。そんな中、復興庁の岡本全勝統括官が書いた論考が参考になりました。地方政府職員むけの雑誌『地方財務』の2008年正月号に寄稿されている「普通の市民が議員、普通の市民が職員」です。全勝さんはここで2020年の日本の姿を、市・道州・中央政府に分けてイメージを整理されています。
 東北復興、さらに言えばこれからの日本の形を考える上で、参考になる刺激的な内容でした。少しまとめてみますが、関心ある方はぜひ原稿をお読みください。

■「市」〜サービス提供者から、連携調整・評価者へ
 人口減少が進み、財政がいよいよ厳しくなる中、市町村の役割と組織はいかに変わるのでしょうか。
 施設と道路を作り、行政サービスを提供するのが、これまでの市町村の役割でした。「景気対策」の名のもとに、必要以上の公共事業を行なってきました。が、効果があがらず、そうしたケインズ政策は小泉政権下で放棄してしまっています。多大な維持費が払えずに、水道や道路などのインフラが危機に瀕していることも、3月31日にNHKスペシャルで取り上げられていました。(http://www.nhk.or.jp/shinsei/ )
 全勝さんは、市がサービス提供者であることは減り、むしろサービスの連携調整役・評価役になっていくと予測しています。施設管理はもとより、様々な行政サービスは民間企業やNPOが担う。行政はそれらを選定し、評価する役目となるわけです。
 市役所の組織も変化します。「公務員」という身分がなくなります。役所で働く人はいますが、彼らは民間企業やNPOの職員であったり、ボランティアだったりする。外から見ても見分けがつきません。地方議員も変わります。普通の会社員や主婦が、仕事を続けながら議員にもなることができるように。会議も、重々しい本会議形式ではなくて、テーマごとの委員会形式となります。
 市町村の統治のありかたも自由化します。首長制を維持するところもありますし、議会が市長を選ぶ議院内閣制を選択する地域も出ます。あるいはシティマネジャーを雇う市も現れます。

■「道州制」〜アジアに経営で対抗する
 全勝さんは、2020年にはすでに道州制に移行する前提をおいています。中央政府でも、市でもない、道州の役割とは何になるでしょうか。
 医療・高等教育・警察・広域の社会資本(下水施設、高速道など)は従来通り求められます。そこに加わるのが、「雇用の創出」。これまでの県は、産業振興といっても、国から命じられるままに農業振興や企業誘致を行なっているだけであって、特色ある産業を生み出すことは出来ていませんでした。しかし道州はそれぞれでシンガポールや韓国並の経済規模を誇るわけです。アジア各国と競い争って、サービス業、観光、医療などで成果を出せるかが問われることになります。
 いまだに県は国の政策を"代行"する、「法令の解釈者」としての役割に留まっていました。これからは、「地域の経営者」になる必要があると、全勝さんは指摘します。

■「中央政府」〜国全体を構想し、世界に貢献する
 市と道州の役割が増していく中、霞が関はよりスリムになります。国の出先機関のほとんどは道州に移管されます。
 さらに全勝さんによれば、これからの行政の役割は「組織」から「個人」を支えるものになるそうです。産業振興や公共事業関係の部門は統合される一方で、国民ひとりひとりの生活を支えるための、国民生活省ができると予測されています。。
 官僚の人事も変わります。省庁ではなく内閣所属になり、各省庁に出向する形態が一般になります。また国際貢献のために、多くの職員は海外に派遣されるとのことです。統治形態も変わります。参議院は道州の代表によって構成されます。衆議院を国政を監視し、参議院は地方の監視役になるわけです。このあたりは、橋下市長をはじめとした地方政党の主張と一致していますね。

■東北の2020年
 全勝さんの予測を東北復興に当てはめればどうなるでしょうか。
 今のところ、被災市町村は土木・建築復旧に力を尽くしています。そのあとは、生活サービスが回復することが求められます。市役所が全て担うことはできません。地元企業やNPOが健全に育ち、市職員と連携しながら公共を支えられるかが鍵となります。
 コミュニティの生業は地域が担いますが、外貨を稼げる中核産業は県がリードする必要があるでしょう。競争力ある産業を、三県が連携しながら育成する必要があります。国は国で、東北復興をバックアップしながら、日本全体の財政と経済を安定させる役割があります。現在は各省庁がかねてから進めていた政策を復活させるために復興機会を捉えているように見えますが、国家単位で政策を見つめなおす必要があるのです。
 市町村、県、国。それぞれが役割を再定義し、民間企業・NPOと連携することができるか。その上で、どれだけ行政職員の行動が変わるか。東北と日本の復興において最も必要なことだと考えます。(4月15日)

■参考文献
岡本全勝「普通の市民が議員、普通の市民が職員」『地方財務2008年1月号』
岡本全勝さんのページでも、ご本人が記事を紹介されています→ http://homepage3.nifty.com/zenshow/page234.html
posted by 藤沢烈 at 00:09| Comment(1) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いつもブログ拝見させて頂いております。

素晴らしいと思います。

勉強させて頂いております。

僕も、

自分にできる範囲で、

何かをがんばっていきます。
Posted by 見目正浩 at 2012年04月19日 15:37
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