2012年05月10日

宮古市の復興が早い理由と、残された課題

 被災地の中でも、復興スピードが早いのは岩手県宮古市だと言われます。例えば比較的同規模の人口の宮城県気仙沼市と比べてみますと、気仙沼市は震災後に人口が6パーセント減少しましたが、宮古市は2パーセントに留まっています。その理由は、宮古市役所が県・国とも連携しながら地場中小企業を全面バックアップしたからです。その施策について、宮古市役所産業支援センターの佐藤日出海所長が『震災復興と地域産業1』(関満博編、2012)に寄稿しています。紹介します。

■水産加工業者は9割事業再開
 宮古市内で、床上浸水以上の被害を受けたのは1108事業所だったそうです。そのうちサービス業が524、商業が350。また水産加工業は57事業所のうち45が被災したそそうです。このうち、40事業所は再開を果たせています。その裏側には、宮古市の迅速な支援がありました。

■ワカメの種付のために支援を急ぐ
 最初に打ち出された支援は、震災から3週間たたない2011年3月30日でした。事業所の資金繰りを支援するために、利子補給を宮古市は実施します。また設備を貸与することで事業再開を支援しました。金額は10年間で2.8億円。全額、宮古市が負担しています。
 6月10日には、漁協に対して費用の8/9を補助する補正予算8.9億円が、宮古市議会に提案され可決されています。これも宮古市の単独費です。お盆前にワカメの種付けを終えるもらうための措置でした。
 こうしたスピーディな支援を実現したのは、震災前から市役所と事業者が互いの状況を把握しており、意思疎通がスピーディだったからとのことです。

■県内最速で工場再建
 宮古市の県・国との連携もスムーズでした。2011年4月27日には、宮古市の要請もあって工場の修繕と再建のための補助金が県議会臨時会に提案・議決されています。これは県が1/2、市町村1/2を補助するもの。修繕費の半額が補助されるのは極めて稀とのことです。また3月11日以降に独自に修繕した費用もさかのぼって補助されたことは事業者から高く評価されています。
 修繕・建築費用が1億円をこえる事業者のサポートは課題として残りました。ここは国との連携が図れられます。いわゆるグループ補助金制度によって、建設費・修繕費・設備購入費に対して国が2/4、県が1/4の補助がなされました。
 宮古市は、この補助金に事業者が申請することを全面的にバックアップ。結果として市内55事業者が採択しています。例えばウエーブクレスト宮古工場(http://www.mono385.net/kougyou-bukai/597 )は、2154平方メートルの新工場を2012年の1月から再開させました。岩手県で最速だったそうです。

■事業再開が進まない5つの理由
 以上、宮古市による事業所支援を紹介しました。もちろん、残された課題もあります。事業再開ができないのは、下記の5つの理由が挙げられるそうです。
1 防潮堤の位置・高さ・完成時期。立地場所の津波に対する安全性が確認できないため。
2 可住地域と非可住地域の区分。非可住地域だと、住宅を併設する店舗や工場が建設できないため。
3 構造規制区域。指定されると、鉄骨造り、鉄筋コンクリート造にする必要があり費用がかさむため。
4 嵩上げ(土盛り)の高さ。嵩上げ高が大きいと、一定期間を経過しないと建物建設に着手できないため。
5 土地の買取と買取価格。非可住地域では土地の買取がなされるのか不明。その金額も不明なため。
 しかし、これらの理由を解消するのは簡単ではありません。地域コミュニティの中で合意形成が必要になるからです。

■合意形成と産業再生の矛盾を解決する
 防潮堤はじめ土地利用のあり方を決めるため、行政による説明会が被災地各地で行われています。この段階を先に進まないと事業所は再開できず、人口は流出、地域は衰退します。といっても行政が無理に進めるべきではありません。住民の意見を踏まえず区画整理を進めようとすれば、早晩に反対運動がおきて計画はストップします。例えば石巻市の雄勝町は当初復興のトップランナーと言われていましたが、計画を急ぎすぎたことで一部住民からの反発が生まれ、見通しがつかない事態に陥っているとのことです。
 簡単な答はありません。「住民の熟議による合意形成」と「スピーディな地場産業再生」、矛盾する二つの要件を満たすことが、復興の鍵になるわけです。(5月10日)
 
■参考文献
関満博『震災復興と地域産業1 東日本大震災の「現場」から立ち上がる』(2012, 新評論) 1463旅 ★★★★


posted by 藤沢烈 at 22:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の旅 ★★★★ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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