先週の岩手日報さんによる特集「産業再生」が素晴らしい内容でした。産業復興のこれからを考える上で関係者は必読ですが、私なりにポイントを3つ紹介しましょう。
■1.新しい販路を開拓できるか
「東北経済産業局の昨年6月の調査では、グループ補助金を受けた5444事業者のうち、売り上げについて「震災前より減少した」との回答が63・4%に達した。水産加工はさらに厳しく、水産庁が今年2〜3月に業界団体に加盟する673事業所に実施した調査では、売り上げが震災前まで回復したのは8%にすぎないという」
『進む施設復旧 「三陸産」戻らぬ販路』
http://www.iwate-np.co.jp/311shinsai/saiko/saiko140803.html
ハード(施設)は復旧したが、ソフト(販路開拓)が課題というのが、4年目の産業復興の最大のポイントです。特に加工度が低くて競争にさらされている商品ほど、棚を変えられて戻っていません。震災前に売上を戻せている会社は、かならず新しい販路を見出したり(通信販売など)、新しい商品を開発できています。即ちイノベーションを起こせているわけです。
■2.人手を確保できるか
「同工場は現在、中国人実習生6人を含む30人が働くが、フル操業にはあと15人必要。しかし、募集しても集まらないという。ようやく集まった地元従業員も60代が中心。平野社長は「水産業のイメージを変えなくてはだめだ」としつつ、今後、外国人実習生を増やす方針で「現状では外国人に頼らざるを得ない」と語る」
『企業の人手不足 誘致、増産の足かせに』
http://www.iwate-np.co.jp/311shinsai/saiko/saiko140804.html
もう一つのソフトの問題がマンパワー不足です。岩手県で、水産加工業の求人倍率は2.57倍。高くても喜べません。工場がどんどん立ち並ぶからではなく、シニアの方が仕事を続けるのをあきらめ、若い方が町を離れるからです。残念ながら、地元の水産加工業の賃金が高いとはいえません(多くは時給700-800円)。復興支援で工場をたてる流れもありましたが、人手不足が顕在化したために止まっています。
■3.「よそもの」を活かして、いかに価値を創造するか
「企業による被災地支援も「ハード」から「ソフト」に転換しつつある。キリングループは2011年、継続的に被災地支援を行うため「キリン絆プロジェクト」を立ち上げた。震災直後は施設設備の復旧を中心に支援。13年からは農水産物のブランド育成や6次産業化の推進などで産業・地域活性化を後押しする。単なる「支援」でなく、事業を通じて社会課題の解決に貢献するCSV(共有価値の創造)の考え方だ。釜援隊など被災地への人材派遣に関わるRCF復興支援チーム(東京都港区)の藤沢烈代表は「東北は『復興』や『被災』ではない価値をつくらなければいけない時期にきている。そういう言葉をもう使わないという覚悟を決めないといけない」とあえて厳しい言葉で語る」
『新しい価値創造 力を与える「よそ者」』
http://www.iwate-np.co.jp/311shinsai/saiko/saiko140810.html
販路開拓と人材確保をはたすためには、新しい価値をうむ必要があります。その希望の一つは、競争環境で価値を続けられてきた「よそもの」が東北にまだまだつながっていることです。キリンさんはじめ多くの企業がCSV(協働での社会的価値創造)のコンセプトで東北に関わろうとしている。多くのUターンIターンが、東北に入って活動している。そうした組織・個人とつながった企業は、新しい価値を生み出しつつあります。
「いつまで復興支援を続けるのですか」と言われることがあります。私はこのように答えます。「復興への支援はすでにやめています。しかし、価値創造のパートナーとして継続的に関わっていこうと考えています」。関係者と日々新しい価値を積み上げ、東北が持続的な社会として自立したとき、結果として復興した、と言えることができるのでしょう。
□参 考
他にも、緊急雇用や企業支援の課題も論じられています。ぜひお読み下さい。
『「官製雇用」の限界 緊急事業、問題相次ぐ』
http://www.iwate-np.co.jp/311shinsai/saiko/saiko140805.html
『模索する起業家 継続的な支援不可欠』
http://www.iwate-np.co.jp/311shinsai/saiko/saiko140806.html
『高度化への挑戦 付加価値で競争力を』
http://www.iwate-np.co.jp/311shinsai/saiko/saiko140809.html
■お知らせ
□RCF復興支援チームでは、復興コーディネイターを随時採用しています。
http://rcf311.com/recruit/
□東北復興に関心ある方は、twitterとfacebookのフォローを是非お願いします→
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(了)