「平成20年度のデータによれば資料購入費を持たない博物館は全体の56%、100万円未満の館を加えると実に76%に上る」p230
「全国の公立博物館、美術館においても予算削減と人員削減により、十分な文化財の収集、保管、調査研究が難しい状況が進行している。また、館の調査研究に立脚したオリジナルな企画が減少し、集客を強く意識した娯楽性の高いイベントが増加しつつある」p231
『博物館危機の時代』(辻秀人, 2012)
学芸員出身で、現在、東北学院大学博物館館長による一冊です。「公立博物館をNPOに任せたら」は、博物館の"民営化"の利点をまとめた本でした(※1)。ただし、なぜ民営化が進んでいるのかの背景も知る必要があります。引用にあるように、「予算削減のながれ」→「指標(KPI)の設定」→「集客数など、安易な目標にながれる」といった状況にいたっています。
復興や地方創生で同様のことが起きそうです。3ヶ月前に、「KPI原理主義」の危険性を書きました(※2)。また、持続性の名の下に、補助金を問題視する流れがあります。
しかし、外部経済性があったり(ex教育)、外部不経済があるから(ex公害)、市場ではない行政やNPOの存在意義があるわけです。補助金かどうかではなく、外部性があるかどうかを見つめる必要があるはずです。
明日5/8は、「博物館と観光、コッツウォルズと釜石」。博物館・観光・復興の流れについて書きます。
※1 博物館をNPOに任せたら。(5月5日)ー藤沢烈BLOG
http://retz.seesaa.net/article/418433606.html
※2 地方創生でKPI原理主義がはびこる恐れ。(2月7日)ー藤沢烈BLOG
http://retz.seesaa.net/article/413651056.html
※3 外部経済性ーコトバンク
https://kotobank.jp/word/%E5%A4%96%E9%83%A8%E7%B5%8C%E6%B8%88%E6%80%A7-184167
■おしらせ
□5/30の社会的インパクト投資シンポジウムに登壇です
→http://impactinvestment.jp/2015/04/529-302.html
□藤沢烈の新著が3月11日に講談社より発売されました。『社会のために働く 未来の仕事とリーダーが生まれる現場』。購入は→http://ow.ly/JI7F3