2008年04月30日

241旅 『『空海の風景』を旅する』 NHK取材班 ★★★★

「幼い照子さんに語って聞かせたという『婆っちゃん』のことを想った。厳しいこの地の自然と闘いながら暮らしていただろう『婆っちゃん』は、文字すら知らない人だった。しかし、その『婆っちゃん』の魂の中に、『空海』は生き続けていたのである。『昔は弘法さんもこうやって修行して、『ほいど』(注:乞食のこと)になって歩いたんだって。変な顔つきしてる人が来ても、実際悪さしたわけでもねえし、そしたらみんな同じなんだって』『私の親が「婆っちゃん婆っちゃん、弘法さんはこんなとこまでは来なかったんだってや」って言うと、婆っちゃんは「来たのや。そんなこと言うもんじゃねえ」って言って怒っていた人だった』」p356-367
NHK取材班『『空海の風景』を旅する』(中央公論新社, 2005)

 人類が共通といった視点を1,000年もの前から悟っていた空海。彼が、死んだ後に遺したことも多い。
 司馬遼太郎の『空海の風景』は、2002年1月4・5日にNHKスペシャルでテレビ放映されている。物語仕立てではなく、司馬好みのドキュメンタリーによる番組だったそうだ。
 スタッフによる制作秘話が、本になっていたのを読んだ。
 『空海の風景』は司馬にとっても思い入れが強い作品だったらしく、撮影依頼は何度も断られていたそうだが、司馬が亡くなった後、ご遺族の許可もあって撮影がスタートした。
 讃岐、奈良、長安、そして高野山。空海が旅した場所を、同様に制作スタッフもたどり、今でもいきづく空海をとらえていった。
 引用は、岩手県での話。当然、歴史上では空海はまちがいなく行っていない地域だ。そこで文字すら読めない御婆さまが、空海を心にもって生きているという。
 私はここに、世界がつながっていくためのヒントを見出した気がする。世界がつながるためには、制度上の国際機関が必要なのではないだろう。むしろ、世界中の人々が会ってもいないのに会ったと信じる、そうした物語が再び必要なのではないか。少なくとも、空海は1,000年かけてその事を成しとげたのだ。

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□参考ウェブサイト
『空海』


posted by 藤沢烈 at 20:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の旅 ★★★★ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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