2008年06月05日

313旅 『日本人の法意識』 川島武宜 ★★★

「当時の日本の生活には、非常に遅れた、およそ『近代的』要素とは縁遠いものが、広汎に残っていたにもかかわらず、それらの法典を読むと、あたかも当時の日本は、最高度に発達した資本主義国家と異なるところがなかったような観を呈する。この意味において、そうしてそのかぎりで、私は明治期の壮大な法典の体系は鹿鳴館と同じく、『文明開化』の日本の飾り、後進国日本の飾りであった、と言ってよいと思う。もちろん、法典起草者は、将来の見とおしとしては、日本の生活が変わっていってこれらの法典が実情にあうものになるだろう、という考えをもっていた」p4
川島武宜『日本人の法意識』(岩波書店, 1967)

 川島は法律学者であり、数多くの著作を著したことから、戦後民主主義を代表する論者とされる。その代表作が本著であり、明治の法律と日本人の意識にいかにズレがあり、その後いかに修正されていったかを論じた。
 川島は法意識についてのみ語ったのだが、日本人の意識の変わり方の例として見ることもできる。
 当初日本人は、権利を主張することを避けていた。その傾向は、都市部を中心に次第に容認されて今に至る。
 川島の説を読んでいると、そうした傾向の変化は、民主的に議論を尽くして変化してきたわけでは必ずしもない。次の時代をみすえてトップダウンで視点が提供され、反発されつつも、段々と変化されていくように見える。
 確かに、日本人らしい心の在り様はある。ただしその点は不変ではなく、時間がかかっても時に大きな変化を起こす。
 これまでは海外から思想を輸入することで、変化のキッカケとしてきた。ただ残念ながら、次の時代に必要な価値観はかならずしも海外に見えてこない。自らの手で平成の"法典"を創り、時間をかけて自らの意識を変えていくことが求められるのだろう。

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□参考ウェブサイト
『川島武宜』

posted by 藤沢烈 at 20:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の旅 ★★★ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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