■平行線の議論
さて、問いは「今夏の電力需要にむけて、原発再稼働すべきか否か」とします。長期的な話ではなく、まず今年の話に絞るということです。様々な意見が出ていますが、平行線の議論が多い模様ですね。
「原発を稼働させないと2.7兆円も費用がかさむ。電力料金が大変なことになる」「いや、人の命には変えられない」。「関西では電力が15パーセント足らない」「ピークだけ頑張れば良い」。「いやいや電力料金に耐え切れなくて企業が海外に出てしまう」などなど。議論が錯綜した場合は、まずは論点整理が必要です。
■再稼働に関する論点は何か
1.電力会社の赤字
2.電力料金高にともなう国内企業の海外移転
3.原発事故によるリスク
4.大規模停電によるリスク
5.環境問題
再稼働における論点は、概ねこの5つに分類できると思います。そして結論から言えば、見解の違いは「原発事故のリスクの大きさ」にのみ現れると考えます。再稼働肯定派は、事故リスクはさほど高くないと考え、それよりも停電や企業海外移転の方がずっと可能性が高いと考えている。再稼働否定派は、まだまだ事故のリスクが高いと考えているわけです。
となれば、たとえば再稼働の焦点となっている、福井県の大飯原発がどこまで安全なのかが焦点なわけです。それ以外を議論しても、肯定派否定派が歩み寄ることはないでしょう。
■再稼働賛成派と反対派にそれぞれ聞きたいこと
さて政府官邸のスタンスも、安全かどうかに重きをおいています。詳細はこちらの官邸HPを御覧下さい→http://www.kantei.go.jp/jp/headline/genshiryoku.html
官邸は安全性に関して3つの基準を示しており、いずれも問題ないとの考えが表明されています。「1安全対策の実行」「2安全性の総合評価」「3安全性向上へ向けた事業者の事業計画・姿勢の明確化」の三点がその基準です。あとは国民や自治体の理解さえ得られれれば「再稼働を最終決断する」と政府は明言しているわけです。
「原子力規制庁が出来てから再稼働する」との考えもあるでしょうが、箱ができるか否かは本質的な論点ではないと考えます。政府が示している三基準はそもそも適切なのか。基準は満たせていると言えるのか。その点を突き詰めなければ、いつまでも議論は平行線だと考えます。
再稼働賛成派からは「なぜ大飯原発は安全と言えるか」。再稼働反対派からは「なぜ大飯原発は安全ではないと言えるか」が、私がそれぞれ聞きたいことです(5月6日)
■参考
読売新聞社説 「全原発停止 これでは夏の電力が不足する」
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20120504-OYT1T00811.htm
毎日新聞社説 「大飯原発再稼働 理解に苦しむ政治判断」 http://mainichi.jp/opinion/news/20120415k0000m070101000c.html
中日新聞社説 「私たちの変わる日 泊停止・原発ゼロへ 」
http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2012050402000068.html